1975年9月発表。HPのタイトルになっている通り史上最高、この世で最も好きなアルバム。何故かCDを7枚、(プレイヤー無いくせに)レコードを3枚持っていたりする。アーティストがキャリア史上最高作、集大成的作品を発表し、その後の作品となるときその製作が如何に厳しいものになるかは想像に難くない。ピンク・フロイドも「THE
DARK SIDE OF THE
MOON」を発表し圧倒的評価と名声を獲得。次作は・・・となった時周囲の期待からくる重圧、プレッシャーはそうとうなものだった。解散の危機や「次作は楽器を一切使わない」といった噂まで広まった。そして四苦八苦の末、生まれた産物がこの「WISH
YOU WERE
HERE」。成功後の作品が叩かれるのは常、この作品も評価は芳しいものではなかったようだ(今ではそこそこの評価を得ている)。全5曲。聴き所はやはり@Dで計25分を埋め尽くす「Shine
On You Crazy
Diamond」。デイヴの(「キュイーン」って言う)泣きのギターは何度聴いても惚れ惚れさせられる。思わず「完璧っ!」と叫んでしまう。リックのシンセの入り方も素晴らしく文句のつけようが無い。ゲストミュージシャンのディック・パリーの奏でるサックスも印象的。“クレイジー・ダイアモンド”とはバンド初期のカリスマ的リーダーであったシドのことを指しているが、この曲の録音中シドがふらりと顔を出したのは有名な話。「何か手伝えることがあれば・・・」といった彼は正気無く、太り、頭の禿げた男だった。以後シドが人前に顔を出すことは無かった(現在では生死も不明)。A「Welcome
To The Machine」、B「Have A
Cigar」では成功と名声を例に痛烈に社会風刺したナンバー。デイヴのギターソロはBでも冴えまくり。C「Wish
You Were
Here」はライブの定番。トランジスターラジオをいじくったようなやり方で全曲との曲間を埋め合わせる方法論は何とも画期的で面白い。美しいアコースティックサウンドをバックにデイヴが歌う。「あなたがここにいてほしい」とはもちろんシドについて歌ったものだ。余談だがレディオヘッドが初期のライブでこの曲をカヴァーしている。前作の比類なき完璧さと比べると劣る面はもちろんあるがこの作品には完璧さを超えた何かがある。全ての快楽を超えた温もり。人間らしくなったフロイド、それは歌詞からも読み取れる。常にシドという呪縛に悩まされ続けてきた彼らがそれを払拭するために宛てたシドへの手紙。個人的な思い入れが強すぎるため客観的に評価できないが、今後どのような作品が出ようともこれを越える作品は出ないと思っている。死んでもこの作品は聴き続けたい。